石工具の歴史
飛鳥時代に作られたと推定される奈良県の酒船石に見える矢穴の跡や、奈良時代に書かれた当麻寺曼荼羅縁記絵に描かれる槌とタガネの使用からでは、石工具の進歩の歴史は江戸時代まで遅々としていたようである。しかし、江戸時代に入ると、石工具は野取り(山石屋)系と石細工(町石屋)系の区別が明瞭になり、山石屋系には切山タガネ(石割りの溝堀り)、ノミ(矢穴堀り)、セット(片手槌)、矢(クサビ)、大ゲンノウ(大槌)などが使用され、町石屋系には細工道具を中心としたソバヨセ(先端が平べったいノミ)、コヤスケ(形を整える)、タタキ(石面を細かくたたく)、ナラシ(細かい突起部をたたく)、ビシャン(面が格子形に隆起した槌)などが用いられた。最後に、これらの道具を使用して像、塔が完成すると、つぎは文字や文様が彫られる。文字彫りの様式は、線彫り(細かい線で彫る)、薬研彫り(深さをV字型に彫る)、竹彫り(底面を竹のようにU字型に彫る)、押彫り(底面を四角形に彫る)などの彫り方があり、この彫り方のみは現代にも活用されてきている。